資産クラスを知り、分配を考える

資産クラスを知り、分配を考える 投資の基本

「証券口座の開設が終わって、これから投資ができるようになった」
「みんなが言っている『NISA口座でS&P500を全力買い』で本当に大丈夫なのかな?」
「どうすれば安全に投資できるだろう?」

少々面倒なマイナンバーカードや証券口座開設の手続きを全て終えれば、投資を始められるスタートラインに立ったことになります。
その勢いのまま実際に何かを買ってみるのも良いのですが、何も知らずに漠然と「全力買い」をすることは後で思わぬしっぺ返しを招くリスクを飛躍的に高めます。
感覚的にでもそんな未来が何となく想像できるからこそ、今あなたは上記のような不安を覚えているところではないでしょうか。

そんなあなたのお悩みに答えます。
まずはこの記事の結論4つから。

  • 世の中には、5つのアセットクラス(資産クラス)がある。
  • 自分の金融資産を、5つのアセットクラスにどの様な比率で分配するかを考える。(アセットアロケーション)
  • アセットアロケーションは自分自身のリスク許容度から設定する。
  • 投資の結果の善し悪しは、アセットアロケーションで80%が決まる。

アセットクラス(資産クラス)とは?

「資産」と聞いて、あなたは何を連想するでしょうか?

  • 一万円の札束
  • 企業の株式
  • マンション

などが頭に浮かんだのではないでしょうか。
これらはいずれもお金(富)がその姿・形を変えたもので、多くの人から資産として認識されていることに間違いはありません。
そして、そのお金が姿・形を変えることで、その特徴・性質が変容し、アセットクラス(資産クラス)が変わるのです。

ここでは、資産クラスの概念と具体的に何の資産がどのクラスに属しているかを解説したいと思います。

現金・銀行預金

政府・中央銀行が発行する通貨、またはそれが銀行に預けられた状態です。
このクラスの特性は、国家によって信用が裏付けられていることと、極めて高い流動性から様々なモノやサービスと交換(買い物・取引)ができることにあります。

  • ドル
  • ユーロ
  • ポンド
  • ウォン
  • ルピー

どこの国の通貨であってもこの本質は基本的に同じですので、すべての国の通貨がこのクラスに属します。

あなたの財布の中にある1万円は、それをあなたが使わない限り明日も明後日も1万円として財布の中に存在し続けますので、「現金は腐らず、リスクが無い」と考えられがちです。
しかしそれは明確な誤りで、現金・銀行預金は経済成長を背景にした物価上昇(インフレーション)時には他のクラスの資産よりも相対的に価値を落とします。

つまり、あなたの財布の中にある1万円は1万円ままではありますが、今日1万円で買えたものが明日には1万円では買えなくなる可能性があります。
これは、「腐る」と呼んでも差し支えないのではないでしょうか。

現金には現金のリスクがあるのです。

債券

ある団体が資金を調達する際に発行する有価証券で、簡単に言えば「借金の記録」です。
お金を借りて債券を振り出した人を債務者、債券を保有する人を債権者と言い、債務者は債権者に対して事前に合意した利率の金利を支払うことと、償還日に元本を返済することの2点についての義務を負います。

  • 国債(債務者は政府)
  • 地方債(債務者は地方自治体)
  • 社債(債務者は企業)

債券を振り出した団体により呼び方が異なりますが、その基本的な仕組みはいずれも同じです。
振り出された債券そのものが市場を流通して売買されることがありますが、値動きは比較的安定しており、その性質は現金・銀行預金に近いとも言えることから、手堅く低リスクでありながらも金利で着実な利益を得て運用する「守りの要」です。

株式

企業が資金を調達する際に発行する有価証券で、簡単に言えば「企業の所有権」です。
株式を保有する人の事を株主と言い、株主は保有割合に応じて経営に加わり、配当を受け取る権利があります。
債券と決定的に異なる点として、株式には償還日は無く、企業は株主に対して返済の義務を負いません。
そのため株主は経営に参画したり、企業が莫大な利益を生み出せばそれを享受できる権利を有する一方で、企業が事業に失敗して倒産してしまった場合は出資したお金を失うことになる、高いリスクを背負うのです。

  • トヨタ自動車
  • 日本航空
  • ソフトバンク
  • Apple
  • マイクロソフト

これらの様に、多くの企業はその株式を上場することで市場に公開しています。
「銘柄」とも呼ばれるこれらの個別企業の株式は市場で日々取引されており、その値動きは債券と比較すると大きく変動しやすい特徴があります。
業績が好調な時やインフレーション時には、株式は現金や債券に対して価値が上がりやすく、高い成長の可能性があることから、資産を大きく拡大するための「攻めの要」です。

不動産

家、マンション、ビルなどの建物や、土地などです。
現金、債券、株式が紙の資産(ペーパーアセット)とされるのに対し、不動産は実物資産となります。
インフレーション時や経済成長時に大きく値上がりする傾向にある事から、株式と相関しやすい関係にあると言えますが、

  • 破損や劣化
  • 修理やメンテナンス
  • 日照や治水や土壌
  • 住人の性格や地域の人間関係

例えばこの様な要素は、ペーパーアセットには無い不動産特有のリスクであるとも言えます。

個人がローンを組んでマイホームを持つことは多くの人にとっての「憧れ」「夢」とされていますが、家を買うという行為は自分がそこに住む・住まない、将来的にその家を売る・売らないに関わらず、その行為自体が不動産投資以外の何ものでもないという事は多くの人が認識しておらず、憧れや夢の背景にある潜在的なリスクには注意が必要です。

コモディティ

エネルギー資源、金属、家畜や農産物、設備、芸術品や楽器、酒やワインなど、不動産以外の実物資産です。
「実物資産」の概念からは少々外れてしまいますが、ビットコインなどの暗号資産についてもコモディティに属します。

このクラスは非常に広大で、クラス内の物品がバラエティに富んでおり、クラス内における価格についても、債券や株式の価格とも相関しない独特な値動きが期待できます。
また、他の4つのクラスと異なる点として、金利・配当・家賃といった資産を保有し続けることによって得られる利益(インカムゲイン)が基本的にありません。
その為、複利はおろか単利で運用することさえ出来ず、利益を得る手段は買値と売値の差額(キャピタルゲイン)のみとなるケースがほとんどであることも特徴です。

また、金(Gold)は古の時代から価値が認められている、コモディティの象徴的な金融商品と言えます。

あなたのアセットアロケーションを考える

アセットアロケーションとは直訳すると資産分配の意味で、上記で紹介した5つのアセットクラスの特徴を踏まえてそれぞれのクラスの保有比率を計画し、それを実行することの概念を指します。

  • 「マイクロソフトの株式を買おう」
  • 「ビットコインはこれから価値が上がる」
  • 「これからは中国とインドの時代、人民元とルピーを持つんだ」

いざ投資を始めるとなると、この様に具体的な銘柄や金融商品の事ばかりを考えがちですが、アセットアロケーションの事を全く考えず思いつくまま衝動的に様々な銘柄や金融商品に手を出していては、大きな失敗の原因となります。

  • 現金・銀行預金
  • 債券
  • 株式
  • 不動産
  • コモディティ


これら5つのアセットクラスの特徴を思い出し、それぞれの保有比率を先に決めておくのです。
そして何かに投資を行う時にはその比率の範囲に沿って投資対象を買い、時々その経過を見て比率を微調整していくのです。

投資の結果の善し悪しは、アセットアロケーションで80%が決まる

投資による資産形成で最も再現性高く成功するには、以下の要素が取り込まれている必要があります。

  • 生産性向上や経済成長といった人類全体規模の緩やかで大きな波に乗る。
  • 投資対象を広域に分散する。
  • 長期の時間をかけ、複利で運用する。

これらの要素を取り込みながら、広い視野を持ってアセットアロケーションで各アセットクラスのバランスを取りながら資産形成を行っていくのです。

「FXと株ならどちらが儲かる?」
「AppleとTESLAはどちらが良い?」
「次にバズる暗号資産は何?」

いざ投資を始めようとしたとき、この様な情報ばかりを目で追っていないでしょうか?
ここには大局的なアセットアロケーションの概念がありません。
この様なことは今の段階で考える必要は無く、これから投資を始める際に重要なのは「何の商品を買うか」ではなく「5つのアセットクラスとどう向き合うか?」なのです。

資産形成が成功するかどうか、アセットアロケーションがその80%を左右すると言われており、上記の様に「何の株式? 何の通貨?」という事は20%側の話であることがご理解頂けたのではないかと思います。

どの様にアセットアロケーションするのが一番良い?

結論から申し上げると、残念ながらアセットアロケーションの概念に「絶対に儲かる黄金比」は存在しません。
個別の銘柄・商品それぞれのリスクが複雑に作用し、資産が増えたり減ったりを繰り返すことになります。
私たちができることは、5つのアセットクラスそれぞれの大まかな特性と自身のリスク許容度を考え、自分で各クラスの保有比率を決めて計画し、自分でそれを実行して守り続けることです。
そして、世の中の社会情勢、経済情勢、政治情勢を見て、時には自分で決めた方針を大きく転換する決断をすることだけなのです。

しかし、これまで投資をしてこなかった人としては、急に「自分でアセットアロケーションをしなければならない」と言われても困ってしまうことと思います。
また別の機会にでも、これから投資を始めようとする人に向けて、どの様にアセットアロケーションしていくか、その考え方と参考事例を紹介したいと思います。

焦る必要はありません。
これからの長い人生、アセットアロケーションとは一生付き合っていくことになります。
色々な情報に触れながら、少しずつ無理なく投資をすることで成功に近づいて行けることを願っています。

以上、「双木さくら」がお届けしました。
これがあなたにとって、ちょっとした幸せの道しるべになりますように。

コメント

タイトルとURLをコピーしました