「投資で失敗しない為には、アセットアロケーションが大切なのはわかった」
「でも、具体的にどうすれば良いのかわからない」
投資の結果の善し悪しは、アセットアロケーションで80%は決まると言われています。
無自覚に自身のリスク許容度を大きく超えた無茶な投資をしない様に、適切な比率設定を心掛けたいものですが、具体的にどうすれば良いのか?
そんなあなたのお悩みに答えます。
まずはこの記事の結論4つから。
- 全財産を生活用資産と投資用資産の2つに分ける。
- 生活用資産は現金・銀行預金だけで構成する。
- 投資用資産は現金・銀行預金、債券、株式の3つでも機能する。
- 黄金比は存在しない、自身のリスク許容度に合わせてチューニングし続けることが大切。
アセットアロケーションとは?
アセットアロケーションとは、直訳すると資産分配の意味です。
- 現金・銀行預金
- 債券
- 株式
- 不動産
- コモディティ
これら5つのアセットクラスの特徴を踏まえて、それぞれのクラスの保有比率を計画し、それを実行することの概念を指します。
各アセットクラスの特徴については、こちらの記事で詳細を記載しています。
まだご覧になられていない方は、是非こちらもご覧ください。
ポートフォリオの実現へ
アセットアロケーションの概念に沿って実際に金融商品や投資対象の購入・売却という形で実現した資産の集合を「ポートフォリオ」と呼びます。
各アセットクラスはその特徴だけでなく、社会から受ける影響が異なっており、価値の変動が相関していたり、相関していなかったりしますので、これらを上手く組み合わせてポートフォリオを作っていくいく必要があります。
あなたの全財産を100%としたとき、各アセットクラスを何%にするのが良いかを計画し、その計画に沿って実際に資産を買ったり売ったりしながらポートフォリオを作っていくのです。
しかし、これまで投資をしてこなかった人にとっては、「自分でアセットアロケーションをしてポートフォリオを作らなければならない」と急に言われても困ってしまうことと思います。
ここでは、これから投資を始めようとする人に向けて、全財産が100万円、毎月の生活費が20万円、賃貸の家に住んでいたり、ご実家に住んでいたりしているケースをの人をモデルにし、どの様にアセットアロケーションを考え、そしてポートフォリオを作っていく参考にするのか、具体例をもって紹介したいと思います。
アセットクラス | 金額 | 保有比率 |
現金・銀行預金 | 1,000,000円 | 100% |
債券 | 0円 | 0% |
株式 | 0円 | 0% |
不動産 | 0円 | 0% |
コモディティ | 0円 | 0% |
全財産 | 1,000,000円 | 100% |
このモデルの様な人のポートフォリオは上記の様に、財産の全てが現金・銀行預金で構成されているはずです。
アセットアロケーションによって現金・銀行預金のクラスから他のクラスへ資産を分配し、投資によって資産形成できるポートフォリオへ作り替えていくのです。
生活用資産と投資用資産
まずは全財産を生活用と投資用の2つに分ける必要があります。
その最適な金額・比率は人それぞれで状況が異なりますが、「投資は余裕資金で行うべきである」という事は忘れないようにしたいものです。
敢えて目安を申し上げるならば、少なくとも3ヶ月分の生活費は投資せずに生活用資産としておくのが良いと思います。
また、例えば3年以内に計画がある大きな支出についても、生活用資産として確保しておくのが良いかもしれません。
ここでは以下の様に生活用資産と投資用資産を区分しました。
分類 | 金額 | 保有比率 | 概要 | アセットクラス |
生活用資産 | 600,000円 | 60% | 3ヶ月分の生活費 | 現金・銀行預金のみで保有 |
投資用資産 | 400,000円 | 40% | 暫く使用しない余裕資金 | これから検討して分配 |
全財産 | 1,000,000円 | 100% | - | - |
生活用資産は日常生活の為に使ったり、近い将来の支出に備えるものなので、ここに充てられた分のアセットクラスは現金・銀行預金として保有すべきで、「投資すべきでないお金」です。
あなたが日本で生活しており、今後も海外に移住する計画が無いならば、日本円として保有するのが良いでしょう。
投資用資産どころか、生活用資産の確保もキツい
もし、余裕資金と言える貯金が殆ど無く、投資用資産どころか生活用資産の確保もままならない場合、少々厳しい言い方になりますがこれは投資による資産形成以前の問題となります。
お金を働かせて稼ぐ「投資」を行うよりも先に、収入と支出のバランスから見直す必要があるでしょう。
資産とは、必ず収入と支出の差から生まれてきます。
日々の支出を良く見直し、あなたの収入の額より下回る様に設定します。
これは「できる」、「できない」の話ではありません。
誰もがやらなければならないことです。
世の中にはあなたより少ない収入、少ない支出で生活している人がたくさんいます。
あなたの人生にとっての「無駄遣い」とは何なのか、あなたのお金の使い道と家計を徹底的に見直してください。
ここから目を背ける限り、あなたは一生「お金が足りない人生」「お金に使われる人生」を送り続けることになります。
投資用資産の各アセットクラスを何%にするのが良いか?
続いて、投資用資産のアセットクラスについて考えてみましょう。
先の例では全財産の40%を投資用資産として区分し、投資を行っていくことにしました。
全財産の40%が投資用資産の100%であると考えると、全財産の1%は投資用資産の2.5%で、投資用資産の1%は全財産の0.4%、という事になります。
どの様なリスクを許容してどの様なリスクを避けるのかを考え、5つのアセットクラスを組み合わせてアセットアロケーションしていきます。
アセットクラス | 金額 | 投資用資産に対する比率 | 全財産に対する比率 |
現金・銀行預金 | ?円 | ?% | ?% |
債券 | ?円 | ?% | ?% |
株式 | ?円 | ?% | ?% |
不動産 | ?円 | ?% | ?% |
コモディティ | ?円 | ?% | ?% |
投資用資産の合計 | 400,000円 | 100% | 40% |
まずは株式の比率から考える
5つのアセットクラスにおいて、資産を拡大させる「攻めの要」は株式です。
資産を拡大させる可能性は資産を縮小させてしまう可能性と表裏一体であり、株式の将来にはそれだけの不確実性(リスク)があります。
高い不確実性だけの話であれば不動産やコモディティにも相応のリスクがあると言えますが、広大なマーケット、取引量と流動性、割安な手数料などを総合的に考えると、個人の資産を再現性高く拡大するにはやはり株式が最適であると言えます。
今の時点で、どこの企業の株式をいくら買うかを考える必要はありません。
まずは「株式」というアセットクラス全体があなたの投資用資産の何%を占めるのかをしっかり計画し、細かい事は後で考えていけば良いのです。
参考事例 株式の保有比率の決め方
100 - 自分の年齢 = 株式の保有比率(%)
株式の不確実性により万が一にも資産が大きく目減りすることがあっても、若い時であれば働いて稼ぐこともできますし、いくらでもリカバリーが効きます。
逆に晩年になって大きく資産を減らしてしまうと、そのリカバリーは非常に困難です。
その為、歳を取るほどに株式の保有割合を減らしていく考え方です。
この比率が絶対ではありませんが、今回はこれを例に考えてみましょう。
年齢が27歳の人の場合、株式の欄は以下の様になります。
アセットクラス | 金額 | 投資用資産に対する比率 | 全財産に対する比率 |
現金・銀行預金 | ?円 | ?% | ?% |
債券 | ?円 | ?% | ?% |
株式 | 292,000円 | 73% | 29.2% |
不動産 | ?円 | ?% | ?% |
コモディティ | ?円 | ?% | ?% |
投資用資産の合計 | 40万円 | 100% | 40.0% |
現金・銀行預金と債券の比率を考える
次は「守りの要」となる現金・銀行預金と債券の比率です。
これらは株式に比べるとリスクが低く、価格変動が穏やかです。
特に債券においては、国債の様に信用度の高い債券であれば、企業が発行する社債よりも債務不履行(デフォルト)の危険は少なく、安定的なキャッシュフローを生み出すだけでなく、株式が大暴落している様な不安定な社会情勢の時に値上がりすることが期待できます。
参考事例 現金・銀行預金と債券の保有比率の決め方
自分の年齢 = 現金・銀行預金と債券の保有比率(%)
察しの良い方なら既にお気付きだと思いますが、考え方は株式の保有比率の決め方と同じです。
歳を重ねる毎に株式の比率を減らした分、現金や債券の比率を上げていくのです。
現金・銀行預金と債券の比率をどのようにするかは好みにもよりますが、現金・銀行預金については既に生活用資産として必要な分を確保しているはずです。
投資用資産として区分した現金・銀行預金は、自分の中で投資用資産に区分しているにすぎず、実質的には投資していないことと同じですから、生活用資産に充分な金額が確保されているならば、投資用資産ではリスクを取って債券にしても良いかもしれません。
ここでは上記同様に27歳の場合を例に、現金・銀行預金と債券を半々に分配してみます。
現金・銀行預金と債券の欄は以下の様になります。
アセットクラス | 金額 | 投資用資産に対する比率 | 全財産に対する比率 |
現金・銀行預金 | 54,000円 | 13.5% | 5.4% |
債券 | 54,000円 | 13.5% | 5.4% |
株式 | 292,000円 | 73.0% | 29.2% |
不動産 | ?円 | ?% | ?% |
コモディティ | ?円 | ?% | ?% |
投資用資産の合計 | 40万円 | 100.0% | 40.0% |
あれ? まだ2つのアセットクラスに分配していないけど・・・
今回の例では、投資用資産を3つのクラスだけに割り振ってアセットアロケーションが決まりました。
実際のところ、これから投資を始めようと考えている人や経験が浅い人にとっては、あまり複雑な内容でアセットアロケーションを考える必要はなく、このぐらいシンプルでも充分に機能すると思います。
考えすぎて身動きが取れなくなるぐらいなら、多少の失敗はしながらであっても動きながら適宜修正していくぐらいで良いのです。
当面の間はこの3つのアセットクラスに絞ってアセットアロケーションすることで全く問題はなく、残る2つのアセットクラスにおいては投資の経験を積み、金融商品について知識を深める過程で取り入れていくことを検討するのが良いでしょう。
投資用資産の不動産とコモディティをゼロにし、全体を整理すると以下の様になります。
分類 | アセットクラス | 金額 | 分類に対する比率 | 全財産に対する比率 |
生活用資産 | 現金・銀行預金 | 600,000円 | 100.0% | 60.0% |
投資用資産 | 現金・銀行預金 | 54,000円 | 13.5% | 5.4% |
投資用資産 | 債券 | 54,000円 | 13.5% | 5.4% |
投資用資産 | 株式 | 292,000円 | 73.0% | 29.2% |
投資用資産 | 不動産 | 0円 | 0.0% | 0.0% |
投資用資産 | コモディティ | 0円 | 0.0% | 0.0% |
全財産 | - | 1,000,000円 | - | 100.0% |
簡単な運用シミュレーションをしてみる
この様にして考えたアセットアロケーションが本当に自分のリスク許容度に見合っているのか、簡単なシミュレーションを行ってチェックしてみましょう。
シミュレーションした結果に違和感があったり、不安を感じる様であれば、この比率を見直すヒントになるかもしれません。
楽観的なシミュレーション
運用が良い調子で進んだ場合のシミュレーションです。
ここでは以下の条件を想定し、10年間運用した場合を計算してみましょう。
- 現金・銀行預金は金利無しとし、年率0%として想定。
- 債券は金利を現金で受け取る単利運用で、金利は年率1%を想定。
- 株式は配当を再投資した複利運用で、成長率は年率5%を想定。
10年間運用した後の資産は、以下の様に変化していることが期待できます。
分類 | アセットクラス | 金額 | 分類に対する比率 | 全財産に対する比率 |
生活用資産 | 現金・銀行預金 | 600,000円 | 100.0% | 50.5% |
投資用資産 | 現金・銀行預金 | 59,400円 | 10.1% | 5.0% |
投資用資産 | 債券 | 54,000円 | 9.2% | 4.5% |
投資用資産 | 株式 | 475,633円 | 80.7% | 40.0% |
投資用資産 | 不動産 | 0円 | 0.0% | 0.0% |
投資用資産 | コモディティ | 0円 | 0.0% | 0.0% |
全財産 | - | 1,189,033円 | - | 100.0% |
もちろん、これはあくまでもシミュレーションに過ぎませんので、実際に10年間運用した時の結果はこれより良いかもしれませんし、これより悪いかもしれません。
この結果になる事を保証するものではありませんが、凡そこのぐらいの成長であるだろうと参考値として考えることはできるものだと思います。
悲観的なシミュレーション
これは楽観的なシミュレーションよりも遥かに重要度が高いです。
お金が増えるのあれば、その増加率が5%、10%、15%或いはそれ以上、大きければ大きい程に嬉しいもので、ポジティブな感情は限界点が無い青天井です。
もちろん少ないよりは多い方が良いのですが、乱暴な言い方をすれば「どんなに少なくても、マイナスにさえなっていなければ投資は上手くいっている」という事になります。
しかし、お金が減る場合に関してはそうも言ってられません。
減少率が5%、10%、15%或いはそれ以上、大きければ大きいほどに心理的負担も大きくなり、これ以上の損失に耐えられなくなる、冷静な心理状態でいられなくなる限界点が必ずどこかにあります。
自分の人生を通じて長期的な運用を行う場合、その間に社会情勢は様々に変化します。
場合によっては酷い金融危機に見舞われ、投資用資産が大きく棄損するかもしれません。
ここでは以下の条件を想定し、強い金融危機に直撃した場合を計算してみましょう。
- 債券は取得時から20%の価格下落。
- 株式は取得時から60%の価格下落。
これらを反映した場合、投資用資産は以下の様に変化していることが想定されます。
分類 | アセットクラス | 金額 | 分類に対する比率 | 全財産に対する比率 |
生活用資産 | 現金・銀行預金 | 600,000円 | 100.0% | 73.7% |
投資用資産 | 現金・銀行預金 | 54,000円 | 25.2% | 6.6% |
投資用資産 | 債券 | 43,200円 | 20.2% | 5.3% |
投資用資産 | 株式 | 116,800円 | 54.6% | 14.4% |
投資用資産 | 不動産 | 0円 | 0.0% | 0.0% |
投資用資産 | コモディティ | 0円 | 0.0% | 0.0% |
全財産 | - | 814,000円 | - | 100.0% |
株式も債券も同時にこれだけ暴落するのは考えにくい事ではありますが、歴史的に見ると債券も株式もこの水準の暴落は実際に起こったことがあるため、今後においてもいつか同等かそれ以上の暴落が起こる可能性を否定することはできません。
このシミュレーションを見て、「え、投資ってこんなに減ってしまうかもしれないの?」と思った場合、あなたはまだリスクを大きく取るべきではないと言えるかもしれません。
この場合、ポートフォリオにおける株式の割合を減らし、その分を現金・銀行預金や債券にすることでこの様な金融危機の衝撃は緩和されることになります。
アセットアロケーションとは?
金融の世界では価値は常に相対的なものであり、5つのアセットクラスにリスク無しとされるものは1つもありません。
良くある間違いに「現金にリスクは無い」というものがありますが、それは他の4つのアセットクラスは現金との割り算(比較)によって価値が数値化されている為です。
例えば株式の価値は 株式 ÷ 現金 の計算式の結果です。
強いて現金の価値を求めようとするならば、 現金 ÷ 現金 で答えは常に1となり、変動しません。
この様にして、まるで現金にはリスクが無いように錯覚してしまうのですが、前述の通り価値とは常に相対的なものですので、株式の価値が上がっているという事は、現金の価値が下がっているということと同じなのです。
つまり、何かを保有するということはその分だけ別の何かを保有していないという事であり、「保有するリスク」と「保有しないリスク」は常に表裏一体なのです。
どのアセットクラスにもリスク無しとされるものはありませんし、どのクラスを何%で保有しようとも、資産全体がリスク無しになることもありません。
これを突き詰めて考えていくと、「絶対に儲かる、アセットアロケーションの黄金比」などというものも存在しないことがわかります。
アセットアロケーションとは、各アセットクラスのリスクと自身のリスク許容度を考え、自分で各クラスの保有比率を計画し、自分でそれを実行して守り続けることです。
そして、世の中の社会情勢、経済情勢、政治情勢を見て、絶えず最善を目指してチューニングし続けるほかは無いのです。
アセットアロケーションは投資による資産形成を図る上で最も基礎的なことでありながら、非常に奥が深い概念です。
あなたの投資による資産形成が成功するか否かは、アセットアロケーションによって80%が決まると言われており、自身のリスク許容度に合致しないポートフォリオとなっていると、大きな暴落に悲観したり、大きな成長を取り逃したりしてしまうことになってしまいます。
何に投資をするか、何を買うかという事よりも、まずはどのアセットクラスを何%とするかを決め、それに沿って自分を律しながら資産を分配していく規律性と、社会情勢と自身のリスク許容度を見ながらポートフォリオを変えていく柔軟性が求められるのです。
以上、「双木さくら」がお届けしました。
これがあなたにとって、ちょっとした幸せの道しるべになりますように。
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